堤通りにあらわれる提灯小憎/宮城

宮城県の妖怪伝説として、提灯小憎の話があります。

雨の夜などに、小さな提灯を下げた小憎があとさきになって行くことがあるそうです。
特徴は、その小憎の顔はホオズキのように真っ赤だということ。
ときどき遭遇するといい、とくにそれ以上、何かがおこったという話はありません。

ただ、この提灯小憎が妖怪的であり、いまの世でも語り継がれるのは、理由があります。
この小憎が姿を消す場所である北一番丁のあたりは、以前から夜更けになると妖火が燃え上がるという評判が残る場所。

そして、その妖火が燃え上がる場所というのが、妻との盆火見物の帰宅後に、乱心して妻を斬り殺したという富岡十之介の屋敷がある場所だということ。



これら、まったく関係なさそうな話がひとつの話としてつながっていますが、関連するキーワードは「火」。

「盆火」、「妖火」、そして「提灯」であり、「ホオズキ」。

ホオズキは中国語で「鬼灯」と書くこともあり、鬼(と言うのは日本のオニではなく、日本での幽霊的概念に近いもの)が持つ灯火を示します。日本では、ヤマタノオロチの目の表現にホオズキを使うなど、古来より「夜でも輝くようなもの」の比喩によく利用されるものです。

「盆火」というのはご先祖様を送迎するための火ですが、場合によっては、ご先祖さま自身の象徴である場合もあります。事実、送り火で迎えた火はそのまま日夜、絶やさず燃やし続けます。

キャンドルセラピー、ライトセラピーなどという言葉がありますが、火は人の心を落ち着かせたり、時には興奮させたりもするものです。

これらの尾ひれ葉ひれをいじくりまわして、うまく話をつなげれば、面白い怪談のひとつも書けそうなものですが、事実はいかようにも解釈できるというもの。


単に顔が赤い小憎が提灯を持って雨の日に出歩いているだけだと言えばそれまでであり、姿を消したのだって、目撃者の不注意で見失っただけかもしれません。盆火見物に行った帰りに富岡十之介が乱心したと記述がありますが、これも祭りの最中に夫婦喧嘩をしたのかもしれません。

事実の組み合わせに過ぎないものが、このように尾ひれがついて、書物に遺され、そして現代、水木しげるらによって絵姿が与えられ、そして現在も語り継がれてゆく。

そこが面白いものだと思います。



ちなみに、富岡十之介が乱心したのが正徳の頃(1711~1715年)の7月15日の夜だったとか。


【ニュースソース】
http://www.nichibun.ac.jp/YoukaiCard/C0411164-000.shtml

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